ラーメン屋に夢と希望は

ラーメン屋に夢と希望はあるか
労働時間の長さに驚いた人もいるかもしれませんが、私は「驚く人がいたこと」に驚きました。それだけ今の日本の労働環境が良くなっているのでしょう。世間では週休2日が当たり前のようです。また、残業時間も月60時間を超えると1.5倍の割増賃金になります。これはかづ屋でも導入していますが、これに該当すること自体が長時間労働であると言えます。
このような業界への就労に二の足を踏む気持ちはよく理解できます。しかし、そうした仕事であっても「働きませんか」と声をかけるのは、それ相応の利点があるからです。大げさな言い方をすれば、夢も希望もある仕事だからです。
ここで私自身のラーメン屋人生をひとつの例としてご紹介し、この仕事の良さを知っていただければと思います。
私がこの業界に入ったのは28歳の時でした。当時は当て所ない夢を追いながらも足がかりを掴めないまま、アルバイトを転々とする日々を過ごしていました。そんな折、家族の病気などの人生の転機があり、将来的に家族を養うために確固とした収入を得る必要に迫られました。そこで商売の道を志し、飲食業へ、そしてご縁があって「たんたん亭」へとお世話になることになりました。修業を経て、5年後に「かづ屋」を開業しました。
28歳で思い立ち、技術の習得と開業資金づくりを始める。一般的な専門料理の習得であれば、下積みから一人前になるまで10年以上かかるかもしれませんが、ラーメン屋はほぼ単品商売であるため、短期間でノウハウを身につけることができます。店や個人の適性にもよりますが、1年もあれば技術はおぼえられます。私の場合も、入店後1年半で店長を任せていただきました。これもラーメン屋ならではのスピード感と言えます。
独立を果たした後、実家への援助を行おうと考えましたが、その対象であった家族を相次いで亡くしました。その後は自分自身の家庭を築こうと結婚し、子供を育てていくことになります。経済的な安定を得られたことで持ち家も購入でき、家族に不安を与えることなく生活を送れるようになりました。
さて、独立開業すれば年収はどのくらいになるのか、世間の興味を引くところでしょう。かづ屋の出身者を例に挙げれば、年収1,000万円は十分に射程圏内と言えます。この数字が高いか低いかは考え方次第でしょう。労働者の平均賃金よりははるかに高い金額ですが、この東京で家を持ち、家族を養い、複数の子供を大学まで進学させようとすれば、決して余裕があるわけではありません。
しかし、店主の能力や頑張り次第で、年収1,000万円以上を狙うことも十分に可能です。そうした可能性のある立ち位置にいられること自体、素晴らしいことだと感じます。
ラーメン屋経営の厳しさが永遠に続くと考えれば途方に暮れてしまうかもしれませんが、これもやり方次第です。
私は今年70歳を迎えましたが、以前ほどの長時間労働はしていません。コロナ禍を契機に従業員へ多くの仕事を任せるようになり、働き方が変わりました。一生涯にわたって過酷な労働を続けることはできませんが、一方でこの仕事には定年退職もありません。自分のペースで続けられるのは、本当にありがたいことです。

