技術も資金もない人は有望

「貧しい人々は、幸いである、
神の国は あなたがたのものである」
新約聖書の『ルカによる福音書』6章20節
冒頭から少し大袈裟な引用をしましたが、これを現実に即した話にします。
長年ラーメン屋の開業を見てきて、うまくいかない典型的なケースは「最初から資金を持っている人」です。資金があり、繁盛店へ短期間だけ潜り込んだり、コンサルタントの手を借りたりしてノウハウを入手し始める場合、その多くは思わしくない結果に終わっています。
ではなぜ、資金を持たない人が有望なのか。それは、短期間ではなく「一定期間、現場で働かざるを得ないから」です。そして、その期間にじっくりと技術の習得ができるからです。
ラーメン作りのノウハウだけなら、半年や1年もあれば覚えられます。しかし、それが「熟練した技術」かというと、そうではありません。指導を受けてノウハウを頭で理解しても、実際にやってみると簡単にできることばかりではないのです。仮にできたとしても、その精度や速さは日々の繰り返しのなかでしか磨かれません。店で作業を任されるということは、店舗運営に携わりながら実践練習ができる、非常に得難い体験なのです。
たとえば、見た目でわかりやすい技術として「平ざるを使った麺上げ」があります。平ざると茹で麺のメカニズム、そして技法の説明を受けていざトライしてみる。最初はうまくいかなくても、自分の賄いをひとりで作り、食べてみる。次は賄いとお客さんの注文を一緒に作り、食べてみる。さらに2人前、3人前と同時に作る数を増やしていく。やがては、ピークタイムの茹で釜前というポジションを任されるようになる――。こうして熟練が進んでいくのです。平ざるの技術ひとつを見れば、その人の他の技術の習得度合いまでわかります。
「かづ屋」では5年間の就労を推奨していますが、実際のところ3年ほどで技術自体はほぼ完成します。しかし店側の願いとしては、覚えた技術で店に貢献していってほしいというのが本音です(もちろん、これは絶対の決まりではなく、やむを得ない事情がある場合もあります)。
そして実際に、独立開業後に繁盛店を作れているのは「5年以上働いた人」たちです。彼らからは、「5年目以降の就労が一番役に立った」「店の運営に深く関わった経験が本当に良かった」という声が聞こえてきます。
もっとも、5年に満たずに開業へ向かう場合でも応援はしています。その多くは他店ですでにキャリアを積んできた方です。かづ屋に入店後、すぐに即戦力となってくれれば、短期間の就労であっても私を含め他の従業員も納得できるからです。
以上が、「資金がなく、すぐに開業できないことこそが、後のラーメン屋としての成功への道になる」という理由です。
さて、ではその「資金の作り方」については、次回お話しさせていただきます。

