日本古代史について
古代日本史に関する2冊の本を読み終え、多くの示唆を得ました。特に印象的だったのは、昭和60年代の教科書に「任那の日本府」という記述があった一方で、現代ではその表現が変化している点です。これは、韓国からの批判や日本国内における皇国史観への過度な反省が影響しているのでしょうか。
最新研究が照らす朝鮮半島と倭の関係
それでは、実際のところはどうだったのか。最新の研究成果からは、新たな見解が見えてきています。日本の古代史研究は長らく中国の歴史書に多くを依存してきましたが、近年は考古学的な新発見や『日本書紀』のより深い読み込みを通じて研究が進展しています。その結果、朝鮮半島南部に倭人の勢力があったことは確実とされています。
古代史における大きなテーマである邪馬台国の所在地論争については、私見ではありますが、素直に解釈すれば畿内説が妥当であると考えます。もし邪馬台国が大和王権の初期の姿であったとすれば、3世紀以降の「謎の4世紀」を経て、7世紀の「日本国」成立に至るまでの輪郭が浮かび上がってくるように感じます。
弥生時代に大陸各地から移住者が訪れたことで、日本列島はゆっくりと人口を増やしていきました。当時の日本列島は、まさに「豊葦原瑞穂の国」と称されるように、増加する人口を養うに足る豊かな土地でした。その中で、いくつもの国が興り、争いを経て、卑弥呼がそれらをまとめ上げ、やがて大和王権へとつながる勢力となっていったのでしょう。さらに、その勢力は朝鮮半島にまで及ぶようになったようです。
人口増加が各地での争乱を誘発していくのは人類史の普遍的な流れであり、日本列島もその例外ではありませんでした。そうした大乱が平定され、倭国内のまとまりが取れた後、かつて国内の紛争に向けられていたエネルギーは、その吐出先を外部に求め、朝鮮半島へと向かったという推測も成り立ちます。これは、あたかも戦国時代を統一した豊臣秀吉が、その戦争エネルギーを朝鮮半島に向けたのと同じ力学が働いていたのかもしれません。
朝鮮半島と日本列島を比較すると、面積において列島の方が広大であり、古代の人口比においても開きがあったと考えられます。この点について、今回読まれた本には言及がなかったとのことですが、おそらく研究途上にあるのでしょう。もし可能であれば、当時の人口や軍事動員兵力など、より具体的な数字を知りたいところです。
663年の白村江の戦いに敗れた大和勢力は、朝鮮半島経営を断念し、国内基盤の確立へと注力していきます。朝鮮半島も新羅によって統一され、国家としてのまとまりを強めていきます。この流れの中で、双方への大規模な人の移動も収束し、極東アジアにおける民族移動期が終わりを告げます。これ以降、現在の日本へと続く国家の形ができあがっていくのです。
古代日本の支配層を支えた渡来人
当時の豪族の出自を記録した**『新撰姓氏録』によれば、古代豪族1182氏のうち渡来系は326氏**を数え、その内訳は百済系が326氏、高麗系が41氏とされています。これは、古代日本の支配層の約4分の1が渡来民であったことを意味します。
しかし、それは現代的な意味での「外国人」とは異なっていました。たとえば、当時の朝鮮半島における人種的分布でいえば、高句麗の支配層はツングース系で一般民は漢族系、新羅と伽耶は韓族系と倭人系でした。国家や国民という概念が確立される以前の段階では、人々が移動し、互いに受け入れ合うことも、現代とは異なる様相を呈していたのでしょう。いずれにせよ、現在の日本民族の成立は、このあたりの歴史的背景から理解できるものだと考えます。