ラーメン屋は儲かるのか


将来の開業を目指して頑張る方々を応援する一方で、私は「果たして彼らを幸福に導いているのだろうか?」と自問することもあります。
昨今の飲食業界を取り巻く状況は厳しいと言われています。原材料費や光熱費の値上げ、人手不足、さらには人件費の高騰。そんな中で、ラーメン店の閉店が増えているという報告も目にします。確かに閉店数は多いものの、統計によれば開業数も多く、ラーメン店の総数は増えているという情報もあります。閉店の理由は、経費高騰だけでなく、経営者の高齢化による「自然死」とも言える閉店や、時代の変化に対応できなかったケースなど、様々でしょう。また、諸物価高騰の中でも、価格転嫁によって乗り切れている店も少なくありません。
では、実店舗レベルではどうでしょうか。端的に言えば「ラーメン店は儲かるのか?」、「私たちが目指す先に明るい未来はあるのか?」と疑問に感じる方も多いでしょう。ラーメン店を開業すれば、どれくらいの客数でどれくらい儲かるのか。まずは私の開業時の例を振り返ってみます。
私の開業経験から見るラーメン店の現実
私が開業したのは平成元年ですが、最初から繁盛店ではありませんでした。開店景気はあったものの、その勢いは長くは続きませんでした。当時はインターネットがなく、地域の方々からの口コミで認知される速度は遅く、しばらくは低収入が続きました。
それでも開業から3年ほど経つと、客数も増え、経営も順調になっていきました。営業時間は午前11時から午後10時まで(午後3時から5時まで中休み)、9坪の店内に15席、アルバイトを1人雇い、1日に120~150食を販売していました。売上は1日あたり10万~12万円、月額で約250万円。そこから原材料費や家賃、光熱費などを差し引くと、最終的な収入は70万~80万円といったところでした。これは36年前のことであり、今とは条件が大きく異なっています。
最近の状況と独立開業の可能性
さて、最近の状況から独立開業を考えてみましょう。一般的に「まずは100食売り上げれば店は継続できる」と言われます。しかし、この数字はワンオペ営業ではハードルが高く、アシスタントを雇わなければ達成は困難です。問題は、パートやアルバイトを雇えるかどうかです。飲食業界、特にラーメン屋は「仕事がキツイ」という世間的な認識があり、まして個人経営で店主とマンツーマンという条件は敬遠されがちです。
そのため、今やワンオペのラーメン店は珍しくありません。では、ワンオペで捌ける量はどれくらいでしょうか。おおよそ80食程度が限界でしょう。その場合、売上は1日8万円、月200万円となり、そこから諸経費を差し引くと手元に残るのは約70万円と考えられます。
しかし、これは客数がまんべんなくあって初めて成立する数字であり、労働強度を考えると限界があります。ごく稀にワンオペで100食以上売り上げる「鉄人」のような店主もいますが、そのような例を基準にしないほうが良いでしょう。
つづく

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