C君とあの戦争を考える4


「ニイタカヤマノボレ ヒトフタマルハチ」は、太平洋戦争開戦を告げる暗号として知られています。本日は12月8日、真珠湾攻撃があった日です。毎年この日を迎えるたび、歴史を顧み、何かを発信しなければという思いになります。歴史を反省する上で、まずもってこの日を深く考えるべきだと感じます。
​なぜこの作戦が実行されたのか、いまだに不思議でなりません。多くの反対意見があったにもかかわらず、山本五十六が職を辞する覚悟で押し切った作戦です。そうであれば、なおさら山本五十六という人物の考察が重要となります。彼を取り巻く謀略的な話も存在しますが、その真意は定かではありません。
​山本五十六はギャンブル好きで知られ、真珠湾攻撃という作戦自体にも極めてギャンブル的な性格がありました。この作戦は、幾重にも重なる成功条件が全て満たされて初めて成り立つものであったと言えます。そして、実際にその条件のかなりの部分が成就し、大きな戦果へと結びつきました。要するに、幸運が重なったことによる成功だったのです。
​しかし、幸運は一方にだけ傾くものではなく、平等に分配されるものです。真珠湾攻撃で得られた幸運が、その後も永遠に続くわけではありません。それゆえに、好機は逃してはならないのです。そう考えると、なおさら真珠湾攻撃後の反復攻撃がなぜ実行できなかったのか、不思議に思えてなりません。
​とはいえ、大局的に見れば、真珠湾攻撃が実行されなければ、その後の世界地図は今とは異なった形になっていたでしょう。
​C君と私は、「あの戦争」について考察を続けています。第一次大戦からシベリア出兵を経て、いよいよ満洲事変へと向かう流れです。この辺りから、いわゆる「過去への反省と謝罪」に該当する領域に入ってきます。
​ここでよく問われる質問があります。「あの戦争は侵略戦争だったのか、防衛戦争だったのか。総理の認識は如何に」と。発言の言質を取ろうとする意図は明白ですが、この問いは繰り返し持ち出されます。
​これは、一般人がこれに確固とした単一の回答を持っているとは言えません。なぜなら、戦争を一方的に「侵略」か「防衛」かといった色で分類するのは困難だからです。
​実際に今戦われているウクライナ戦争であっても、軍事侵攻したロシアは、自国を守るための「防衛戦争」であるという意識を持っているでしょう。
​さて、満洲事変を考えてみても、事態は単純ではありません。事変の発端は、日本の現地軍である関東軍の謀略によるものです。その点から見れば、侵略的な色合いがありますが、満州における日本の権益を守るという防衛意識が根底にあったことも事実です。さらに、満州における統治機構の不安定な状況は、ソビエトならびに共産主義の侵食の恐れもありました。
​関東軍という出先機関の独断行動が、結果的に国益になりそうだとなれば、政府としてはその結果を覆すという決断には至らず、なし崩し的な追認という形になりました。
​国の機構を逸脱する行動が国益になりそうであれば、その逸脱を咎めず追認した結果は、後々に悪しき前例として残りました。同様の事例が積み重なり、日本は後戻りできない窮地へと向かっていったのです。我々が反省しなくてはいけないのは、このような国家組織の無秩序な状態であったと言えるでしょう。

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